●本ができるまで

「本がとどくまで」(岩崎書店)という本には本ができるまでのことが書いてあります。出版社の人が作ったものだからよくできています。これでこの企画はおしまい・・・というわけにはいきませんので、この本には少ししか書いていない、原稿ができるまでのところを重点的に報告します。

人によって、出版社によって、また企画ごとに、本の作り方はちがいます。ここに書くのは、一作家画家の一例ですが、実例そのまま書いてみることにしました。「はれぶたシリーズ」の第8巻目の様子をお見せします。


●話を考える
一から作る場合は、まず主人公を作って、名前を考えたりしますが、シリーズなのでもう決まっています。小学三年生の男の子の則安にあった話にしなければならないので、苦労します。大体は寝床でうんうんうなって考えます。できなくて、そのまま眠ってしまいます。ときには、夢のなかでアイデアがうかぶこともあります。そのためすぐメモできるように、らくがき帳とボールペンはいつも用意しておきます。ポケットにも短い鉛筆、風呂にもメモをおいてあります。つまり他人からみたら遊んでいるように見えるときも、頭ははたらいている。どんな仕事でもプロはみんなそうです。一場面のアイデアや、全体は大体こんな話というくらいのところです。が、じつはこれが精神的には一番苦しい仕事です。テーマが決まって、題名ができたら、やれやれという気分になります。



●原稿を書く
 お話を作って、文を書く。絵本や幼年童話は画家がひとりで文も書くことも多い。漫画家から絵本に転向したひともいます。昔は原稿用紙でしたが、今はワープロ、パソコンで書く作家も多いでしょう。文を書き始めたら、つまらないお話だと気がついて、この段階で捨ててしまうこともあります。



●割り付け(原稿用紙の文をページに割りつけていきます。絵を入れるスペースもここできめます。)
絵を書かない文章書きの作家の場合は、この仕事は出版社の編集者がやります。また、画家が、このページのこの文に対しては、この絵を描きたいと思えば、画家が決めることになります。
絵本は全部カラーで、15場面くらいですからまだいいのですが、幼年童話になると80ページなので40場面近くにになります。おまけに白黒のページに、ところどこカラーのページがはいりますが、印刷の都合にあわせて、カラーページをきめていきます。「はれときどきぶた」の場合、ぶたがふってくるところがカラーになっていますが、そのようにうまくページを割りふっていったからです。この作業はクイズのように頭を使います。自分で作ります。見ただけで頭がいたくなるでしょう。(写真は場面割りの表。)

●絵を描く
画家の仕事はここからです。文に「入口の門がアハハとわらっている」と書いてあるので、そういう遊園地らしい門を頭をひねって作り上げます。ふだんから遊園地に行って遊ぶのも画家の仕事です。遊びながらもいろんなところを目に焼き付けておきます。それが、実際に絵を描くときに役立ちます。

普通は紙と絵の具を用意するのですが、今回はパソコンで描きました。朝から晩までパソコンの前にすわりっぱなしで、ペンタブレットを動かします。神経を使いますし、目はしょぼしょぼになります。好きでなければ出来ない仕事です。ときには、行き詰まってなにも描けなくなることもあります。
手間がかかるのは、絵を描く前に調べる作業です。はたらく車の絵などは、うそをかいてはいけないので、写真をとってきて、細かいところまでよく見て描きます。毎日描きっぱなしでも二カ月はかかりました。(写真はトランプの場面)


●絵を出版社に納める
出版社編集部紙に描いた画家の場合は、大きな原画をかかえて出版社へ持っていきます。編集者がとりにきてくれることもあります。今回のマックで描いたものはMOにコピーして郵送しましたので、楽でした。
編集部で字を入れたり、広告を入れたりしてから、原稿を仕上げます。編集部だけでなく、営業のひとにも見てもらいます。今回は営業部からの提案で「いつもこころはアハハエン」だった題名が「はれときどきアハハ」に変更しました。画家はあわてて題名の文字をデザインしなおして届けます。


●印刷所へ回されます。 ここからは「ほんがとどくまで」という本にのっているとおりです。(写真は編集部Mさんのデスク。本や資料の中にパソコンが埋まっています。)


●校正刷り
印刷所から試し刷りをしたものが上がってきます。そこで、文や字が正しいかどうかを、確認します。絵や色具合を見て、最後のチェックをします。校正をいいかげんにやると、印刷をはじめてから、あわてて機械をとめたり、刷ったものを捨てたりすることになりますので、とても大事な仕事です。編集者、画家、デザイナーが印刷所へ行って出張校正をすることもあります。
●印刷
印刷というと寅さん映画に出てくるタコ社長の印刷所をおもいうかべますが、今は機械がとても新しくデザインされていて、安全できれいな工場ですね。
(印刷機、三美印刷にて)
四色刷りの機械。

製版して刷版をつくります。写真はマゼンダ(赤)の版。金属板にレーザーでやきつける。これにインキをのせて刷ります。表紙カバー二枚分を刷って、あとで切ります。

黄色、青、赤、黒の四色を刷り重ねていきます。










ときどき一枚ぬいて印刷具合を調べます。(写真撮影は岩崎書店編集部の人。印刷に立ち会うのも大事な仕事です。)

●印刷のあとは製本所へはこばれて本の形になります。このレポートはここまで。(矢玉四郎)
2007/8/9)

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